催眠お師匠さんが薔薇の詩人のお話をしてくださった時のことが思い出されます。

薔薇の詩人という人がいてね、その詩人は薔薇の棘に刺さって死んだとか死ななかったとか。

その詩人の墓跡にはね

「ああ薔薇よ!誠の矛盾よ!いくつもの瞼を持ちながら、誰の眠りでもない、喜びよ」と刻んであるんです。

その薔薇の詩人が、友人と共に歩いていると、橋の袂に老婆が座っていたんです。

薔薇の詩人は、友人に「どうしてあの老婦人はあそこに座っているのか」と尋ねます。

すると、友人は「あの婆さんは、あんなだから、あそこに座っているんだよ」と答えたんです。

それからしばらくして、薔薇の詩人は一輪の薔薇を持って、橋の袂に座っている老婆のところに、近寄っていきます。

そして、薔薇の詩人は、老婆に差し出した一輪の薔薇。

差し出されたその薔薇は老婆の目にはどのように映っていたのか。

老婆は、差し出された薔薇をある表情を浮かべながら、受け取ります。

 

その後、あの橋の袂には老婆の姿を誰も見ることはありませんでした。

そんな橋の袂を見るたびに、あの墓跡に刻まれた、あの詩を思い出すんです。

「ああ薔薇よ!誠の矛盾よ!いくつもの瞼を持ちながら、誰の眠りでもない、喜びよ」。

 

私は、お師匠さんの話を聞きながら、いつの間にか眠ってしまっていました。

そう、薔薇の詩人が老婆に薔薇を渡した場面で、いつの間にか、私の目の前に薔薇が差し出されたような感じで、私はその夢の中で「私が受け取っていいのかしら」と思いながらも、一輪の薔薇を受け取っていたんです。そこから、私は深い眠りへと入っていき、催眠のお師匠さんの覚醒の合図と共に「あぁ!いつの間にか催眠状態に入っていたんだ!」と気が付きます。

 

そして、帰り道を歩いている時に、私には不思議な感覚があったんです。それは一輪の薔薇を胸に抱いている感覚で、その薔薇の香りが私の中に漂ってきていて、私の胸を満たしていた。

そして、あの橋の袂に座っていた、私は立ち上がって、そこから歩き始めます。

 

2025年9月5日にギフテッド教育のことが新聞記事に書かれていたことをきっかけに、ここまで皆さんと一緒にギフテッドのナラティブを書き続けさせていただきました。

 

これまで描かれてきたギフテッドのナラティブは、催眠のお師匠さんが私に読んでくださった「薔薇の詩人」が元になっています。

 

これまで描かれてきたナラティブが一枚一枚の花びらとなって幾重にもおり重なって、一輪のバラとなる。

 

薔薇の詩人からその薔薇を差し出された老婆は、あの色の花びらが幾重にも重なる薔薇を見て、どんなことを思ったのか。そして老婆は、どうしてあの橋の袂に戻る必要を感じなくなったのか。私が目を閉じた時に、瞼の裏に浮かぶあの色の一輪の薔薇が教えてくれるような気がするんです。

 

ギフテッド教育も一輪の薔薇であったら美しい。

そして、どんなに年齢を重ねても、一輪の薔薇を受け取ったら、それがギフテッド教育になる面白さ。

 

(END)